◇◇◇新型コロナウイルス感染拡大防止のため,5月6日まで臨時休館です◇◇◇
臨時休館に伴い,ホームページを使って当館所蔵の資料を紹介します。
今回は第二弾
やなせたかし,大岡信
万葉の歌の揮毫書 ~市井の人・どこか井伏鱒二に通じる~
〇やなせたかし 作2点(詩人・漫画家・絵本作家・国民的人気作品「アンパンマン」の作者)
2004年,万葉の歌の揮毫書,掛け軸(ヨコ約35cm×タテ約136cm)当館蔵

①万葉集 大伴旅人の挽歌 吾妹子(わぎもこ)が見し鞆の浦のむろの木は 常世(とこよ)にあれど見し人ぞ(そ)なき
【(大宰府へ下るとき)妻が見た鞆の浦のむろの木は,いつまでもこの世にあるけど,一緒に見た妻は,今はもうこの世にいない】

②万葉集(詠み人知らず,鞆の浦の地名入り)
海人小舟(あまおぶね)帆かも張れるとみるまでに 鞆の浦廻(うらみ)に波立てり見ゆ
【漁師の小船が,あちこちで帆を張っているのかと見違うほどに,鞆の浦全体に波の立っているのが見える】
〇大岡 信 作2点(詩人,評論家,文化勲章受章)
2004年,万葉集の歌の揮毫書,掛け軸(ヨコ約35cm×タテ約136cm),当館蔵
2つの作品ともに,静かな波音とともに,万葉の歌の響きが聞こえてくるような優しい字で書かれている。①は,歌の終わりに字がやや小さくなり,
余計に余韻が伝わってくるようだ。②は,少し勢いよく書かれ,元気づけられるように見れる。<

①万葉集 大伴旅人の挽歌
鞆の浦の磯のむろの木見むごとに 相見(あいみ)し妹は忘らえめやも
【鞆の浦の磯に立っているむろの木を見るたびに,一緒に見た妻のことが忘れようにも忘れられない】

②万葉集(詠み人知らず,鞆の浦の地名入り)
ま幸(さき)くてまた還(かえ)り見む大夫(ますらお)の 手に巻き持たる鞆の浦廻(うらみ)を
【幸いに無事であったなら,また帰りに見よう。立派な男子が手に持つ鞆(とも)という名のこの鞆の浦を】


